千二百年前、弘法大師により開かれた高野山。朱色の大門が聖地への扉ならぬ入り口です。
ここは真言密教の修験道場であり、全国に広がる高野山真言宗の総本山。多くの旅人たちの心癒し、高く幹を伸ばす高野杉のように、次なる高みへと導く場所なのです。この地で体験できるのが『心を癒す念珠づくり』です。凛とした空気が流れる中で、玉を一つひとつ磨き紐で通す。組み上がる頃に手元に残るのは、きっと念珠だけではないはず。
 

奥の院に程近い場所で念珠作りを教えている光木阿字館の中前さんを訪ねました。

 
 
 
 
 
 
 
 

球体にしなくていいんです。心を磨くように、気持ちが丸くなるようにと念じながらですよ

奥の院に程近い場所で念珠作りを教えている光木阿字館の中前さん。高野山で念珠作りとは何とも雰囲気にぴったりである。だが、そんな軽い発想から体験が始まったわけではない。
一般的に言われる「いつまでもあると思うな親と金」。これに当てはまる出来事が中前さんの身にも起こった。父親が急に亡くなったのだ。今から約14年前の事。それから3年経たある日、父が大切に保管していた貴重な霊木を発見した。そこでこの木を使って念珠を作れば、父親だけでなく先祖の供養にもなるのではないかと考えたのである。
亡き父の導きか弘法大師の導きか、折良く生前、父から木工の手作業などを教えてもらい世話になったという数珠屋さんより昔ながらの数珠の作り方を教そわることに。こうして数珠作りは始まったわけだが、霊木を球状にする作業は至難の業。木工を使い建具や小物を作る家業だったので四角に切る道具はあれど、球状にする道具はない。そこでサウンドペーパーで何度もこするなど、聞いた話を参考に、手探りで少しずつ珠を丸く磨いていった。
 玉を片手に優しく語りかける中前さん
 
 
 念を込めて凡字を彫る
 
父の供養のために。丁寧に玉を磨き、最後に玉を組みあげた時、不思議と心が穏やかになり癒される思いがした。これは他の人にも体験して欲しい。そう考え念珠作り体験の幕を開けた。8年前の事である。

最初の工程は、一番大きな玉・親玉を磨く。「宝石のようにはなりませんが、磨くと、とてもきれいになっていきます。ごく稀にきれいになりにくい物もございます」。そんな中前さんの言葉を誘い水に、誰しも一心不乱に磨く。そこでつかさず「工作ではないので球体にしなくていいんです。心を磨くように、気持ちが丸くなるようにと念じながらですよ」と諭す。途中、中前さんは弘法大師、高野山、お釈迦様など壮大な仏教の歴史を紐解き、お客さんに優しく語りかける。外国人には理解し難く、無宗教な人がほとんどの日本人には響きにくい。だが、彼は弘法大師や仏様の言葉は、世界共通で伝わるのだと言う。結果、友人の付き添いで訪れた人でも、組み上がった時の表情や雰囲気はとても穏やかに。
お客さんによっては、念珠を作るうちに心の整理がついたのか、中前さんに悩みを打ち明ける人までいる。これが時には、パワースポットのような場所とさえ評されることも。心に闇を宿した人に、光を授けるだけでなく、新たな力をも授けてしまう、そんな不思議な効果がこの念珠作りにはあるようだ。
 
高野山で生まれ、生活する中前さん。それに対し、高野山以外を居に構える多くのお客さんは、世界遺産の顔を持つこの地に敷居の高さを感じている。
だが、中前さんは「そんな堅苦しい山ではないですよ。どんな気持ちで来られても、その人なりに何かを得られる山であり、いろんな人の場所だと思います」と話す。

総本山として、宗教・文化が息づく町。ここで中前さんは仏教という歴史と共に、心を磨く大切さ、安らぎなど中前流の癒しを、体験を通して伝えている。

中前さんが出迎えてくれる「心癒す念珠づくり」体験プログラム詳細は↓をクリック

白崎クルーズ