梅愛好会

南部梅林、南高梅の名で知られるように名実ともに日本一の梅の町で知られる"みなべ町"。
日本には伝統的な色の名前があります。紅梅、梅鼠、栗梅、梅紫、灰梅と言いえて妙な色名に、梅が使われることもしばしば。そのひとつに梅染があります。梅屋渋で淡く染めた赤みの薄茶色。そして梅で染めたものを「梅染め」といいます。室町時代の中頃の文献に、梅染めが記されています。今回紹介する梅の里・みなべでの5人の女性たちによる「梅染め」は、日本の伝統色・梅染では言い尽くせない“一期一会”のやさしい色に出会えます。
 

 
材料となる"南高梅"の木の皮
 
柔らかく優しい風合いの生地
 
 
 

干場にたなびく淡い、桃色ならぬ梅色の手ぬぐいの数々。すぐ傍で女性5人が互いに今日の出来を讃える声が春風に乗って流れる。 市町村に1つはあった村づくり塾。この地では梅の先覚者・内中源蔵にあやかり源蔵塾と名付けられた。そのメンバーだった五人。約12年前、塾の活動でイベントに出る際、法被代わりに着る作務衣を梅で染めたらどうかと、趣味でしていた永井さんを中心に、みんなで梅染めを始めたのがきっかけだった。

梅染めは草木染めとは違い、染料づくりに手間が掛る。通常草木染めは草を摘み、煮出すが、梅染めは染料となる梅の木を切り、皮を削るとこから始まり、かなりの重労働。しかもハンカチや手ぬぐいなど軽い物を染める時は良いが、染液がまとった作務衣をムラなく仕上げるため、ひっくり返す作業は女の細腕では厳しいもの。「染め物は60歳まで」そんな言葉があるそうだが、永井さんはもうすぐ64歳。今もなお染めに寄り添うのに理由がある。 灰汁、みょうばんなど何を媒染液に入れるかによりベージュ、黄色、グレー、紫、そしてピンクとでき上がりは異なる。しかも染液の素となる梅の木は、同じ木であっても使う枝、天気や湿度によって微妙に色合いは違い、絹、木綿、毛、麻、紙など何を染めるかによっても異なる。だからこそ、今日染めた色にまた出会うことが難しい。だが時折、狙い通りの色が出ることも。そこが神秘的で奥深く、さらなる創作意欲が掻き立てられる。実は染め上がりにきれいな色が出る材料を使いたいが、環境を考えると使う気にはなれない。それゆえに二度と出会わないかもしれない、そんな邂逅を楽しんでいるそうだ。

 
 
 
 
 
 
 

 「染め物に失敗はないんです。“今日の色”“今日の出会い”があるから。染液を入れすぎても、入れすぎたからこその出会いがある。こうでないとはないはないんです。最近はピンクに染める事に挑戦しているの。プラムピンクって名づけているんだけどね」


そう彼女が指すプラムピンクとは、やわらかなピンク色。 物知りで研究熱心な人、きめ細やかな気配りが得意な人、縁の下の力持ちの人など多士済々。梅染めから愛犬や孫までさまざまな話をしながら、今日の出会いを分かち合う。プラムピンクはそんな5人が干場で笑う時に流れる、春の香りがする暖かな風のようだ。
4年ほど前、梅染めを通じてみなべの町を知ってもらいたくて、梅染め体験を始めた。本日の体験者は子どもたち。絞り具合で表情を変える模様と今日の色が作る世界で一つの作品を前に笑顔をこぼれる。媒染液に漬けている間に、梅の魅力を伝えることもある。
体験中に見える関心顔も子どもたちの笑顔も、梅染めがもたらしてくれた出会いの一つだ。
今日の色との出会い、新たな人との出会い。梅染めがさまざまな出会いを与えてくれた。
春色の衣類に身を包んだ彼女たちは、五つの個性がおりなす糸を、新たな出会いを重ね、
これからも深みのある絆へと染め上げていく。


梅愛好会代表者 永井さん
 
 
 
梅染め体験
うめ振興館